Strasbourg Fabrique de Faïence (1721-1784)                                back

circa 1762-1784 (Strasbourg Fabrique de Joseph Adam Hannong)
                              ストラスブールのジョセフ・アダム・アノン工場
Plateau pour Moutardier
マスタードのトレイ
Atelier de Peintre :  numéro 82    (Petit feu en qualité fine  et sans Poncif)

Axe Majeur :           cm                    

Marques : un point et H et le numéro de forme 756  en bleu

                   numero d’atelier de peintre 82  en brown





















































































































このトレイは、ジョセフ・アダム・アノンが、1762年にフランケンタール窯をファルツ選帝侯カール・テオドアに売却し、ストラスブールに戻った後に制作された、ファイアンスのマスタード入れのトレイである。
低温で焼き付けた多色装飾、プティ・フュ(Petit feu)という技法によって、花絵が描かれている。この窯では、殆どの花絵が銅版画を元に作られたポンスィフ(Poncif)というステンシルを全体の部分部分に当てて描き、画面を構成してる。
主に使用された銅版画は、ジャン・バティスト・モノワイエル(Jean Baptiste Monnoyer)、ジャック・ヴケール(Jacques Vauquer)、ジャコブ・エフナゲル(Jacob Hœfnagel)ら、16世紀から17世紀まで広範囲に渡る。
しかしこのトレイの絵付けは、ポンシィフを全く使用せず、フリーハンドで描かれており、その意味では珍しい作品である。

このトレイの用途は、1771年にジョセフ・アダム・アノンが出版した販売カタログ(de Catalogue Marchand 1771)によって、型番号の青で書かれた756から、マスタードポットのトレイだと解る。
絵付け師については、82番の工房でされた事は分かるが、誰が描いたかは特定出来ない。



この時代のフランスのファイアンスの装飾は、一つのヨーロッパの美意識における転機を表している。
ストラスブール窯を始め、多くのフランスの18世紀の窯は、東洋の写しとしてでは無く、自分たちの美意識として、画面の中に空間を設け、左右非対称の柿衛門様式の構図を採用している。磁器では、当ギャラリー内でご紹介している、ストラスブール窯と関係の深い、ドイツのフランケンタール窯の花絵のお皿の構図を見て頂きたい。

またこの窯には、輪郭線を用いず、写実的な画法で描くqualité fine とは別に、輪郭線を黒で描く、極めて平面的な画法のqualité contournée という技法もある。後者はまるで浮世絵を思わせる作風である。

このような古典的なヨーロッパ的美意識から来る左右対称の美に反する構図が、いかにして定着して行ったのかは興味深い。テキスタイルを通してか、焼き物を通してか、または漆器か、おそらくは17世紀からの日本の工芸品の影響は充分に考えられる。
アルザス・ロレーヌ地域でこのような美の変革が起こり、19世紀に入ってそういう土地で生まれ育った、例えばガレのような職人が、ナンシーのアール・ヌーヴォーを牽引したとしても不思議ではないだろう。





Référence   
Strasbourg Feïances et Porcelaines 1721-1784  TOME 1 et TOME 2    par Jacques Bastian

          
                                                               
                                                                          


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