Possibilmente Vinovo (1776-1820) back
circa 1780−1815
Lattiera Pasta : Porcellana dure
ミルク入れ
Altezza : 15.0 cm Diametro : cm
Marca : ‘ V ‘ inciso
『V』の刻印
独創的な曲線で構成されたハンドル。注ぎ口の下に半球形の膨らみが設けられ、ボディには紋章が描かれている。この二つの紋章(Heraldia)から構成される形式は、典型的なイタリア系の紋章である。上縁の金彩の装飾も特異である。
実はこのミルク入れは北イタリアのピエモンテ、サヴォイア公国のトリノで制作されたヴィノーヴォ窯の作品と考えられる。
ハンドル、注ぎ口、紋章に、イタリア製の特徴があり、上縁の金彩装飾のパターン、決めてはやはり底に刻まれた『V』の刻印で、ヴィノーヴォ窯であろうと思われる。
ただイタリア諸窯では、ヴェッツイ(Vezzi)窯を始め、ヘヴェルケ(Hewelke)窯も『V』を使用している。
実際このミルク入れは、ヘヴェルケ窯としてオークションに出されていたが、明らかに素地が異なっている。筆者はこの作品の売り主がヘヴェルケ窯と偽って、彼が一体どれだけの人がその窯の事を知っていると考えているのか、非常に疑問に思った。
ヘヴェルケ窯とは ドレスデンでマイセン窯に関係した磁器商人 ナタニエル・フリーデリッヒ・ヘヴェルケ(Nathaniel Friederich Hewelcke) が、ヴェネツィアで1758年に開いた窯である。 ヘヴェルケ窯は、およそ市場に知られず、また市場には出ない窯である。
素地、作風よりヴィノーヴォ窯の可能性が高いのは確かだが、やはり問題なのはこの刻印である。ヴィノーヴォ窯の最もポピュラーな窯印は、黒で『V』と『+』を組み合わせた窯印が底に描かれたものであるが、この作品と同じ『V』の刻印のみの作品が、参考文献①に掲載されており、またヴィクトリア・アンド・アルバート美術館にも『V』のみの刻印の作品が存在する。
総合的に、可成りの確度でヴィノーヴォ窯と言って良いと思われる。
では次に問題なのは一体ヴィノーヴォ窯のどの時代のものかである。作風はロココの残照を残し、上縁の金彩装飾もアノン時代からある装飾ではあるが、紋章の金が良いのとは対照的にハンドル、注ぎ口は薄い金彩である。やはり18世紀末から19世紀初頭が妥当な線と考えられる。
素地はしっかりした硬質磁器で、窯印がこのタイプの『V』の刻印になるのは、次ぎのジオアネッティの時代と考えられる。ちょうど新古典主義に移行する以前の作品ではないだろうか。
なお紋章に関しては更に調査が必要と思われる。
注ぎ口の下の球形の装飾は、ヘヴェルケ窯や、コッツィ窯の一部の作品でも見られるが、コーヒーポットにも見られ、ティーポットには見られない。
この様な装飾は、注いだ後の注ぎ口からの下垂れを、一時受ける役割も果たしてくれるものと思われる。テーブルを汚す前にナプキンで拭き取る事ができると考えられる。
Riferimento
① La porcellana in Piemonte(1737-1825) Andreina d’Agliano e Cristina Maritano
② Porcellane Italiane della collezione Lokar Andreina d’Agliano et al