飛び跳ねる鹿が2匹に、染付けではあるが、おそらく楓のもみじ(紅葉)が描かれている。裏には梅花文、銘は渦福である。
この2枚のお皿は17世紀の後半に有田で焼かれた古伊万里のお皿である。
鹿と紅葉の意匠は、この時代に多く制作されている。
因みに鹿と紅葉の起源は、古今集 秋215猿丸太夫「奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋はかなしき」と言われている。
しかし古今集では多くの歌を季節の移り変わりを表しながら編集されており、この歌は仲秋の歌群、萩を読んだ歌の所に出て来るもので、従ってこの紅葉は、萩の紅葉の事を指しているものと思われる。新撰万葉集では、「黄葉:もみじ」と表記されている。萩のもみじは、黄色である。
その後戦国時代から江戸初期にカルタが流行し、百人一首の中にこの歌が、個別に取り出される中で、紅葉が楓のもみじと解釈されるようになってしまったようである。
またカルタとは、16世紀の後半、安土桃山時代の¨天正年間にポルトガルより伝わったもので、「天正カルタ」と呼ばれ、これが江戸初期には「ウンスンカルタ」、江戸中期になって所謂「花札」になり、おなじみの楓のもみじに鹿が描かれた札が、この意匠が描かれるに至る、決定的な役割を果たしたものと思われる。
時代的にも、大体このお皿の制作時期に一致すると思われる。
柴田コレクションに、このお皿と殆ど同じ鹿と楓のもみじの絵が描かれた染付け皿が存在する。