1763年、ヘヴェルケ(Hewelcke)がドレスデンに帰国し、一人取り残されたのはヘヴェルケ窯のパートナーであり出資者でもあるジェミニアーノ・コッツィ(Geminiano Cozzi)であった。
しかし彼は現代で言う真の起業家であった。
1764年、彼はヴェネツィア上院から磁器製造の許可を得て、ピエトロ・ロレンツィ(Pietro Lorenzi)と共に、ヴェネツィアの北側、カナレッジョ(Canareggio)のサン・ジオッベ(San Giobbe)に磁器の工場を建設した。
彼はそれ程の資金が有った訳では無かったが、ドレスデンのヘヴェルケとコンタクトを密接に取る事によって、原料の動向や、マーケットのニーズに関するヘヴェルケの豊富な知識を活用していた。
アントニボンのレ・ノーヴェから熟練した職人を引き抜き、議会に対しても、特権的な磁器の生産では無く、労働者の移動を制限する特権を請願し、1765年8月21日にこの権利を獲得した。しかし後には、ヴェネツィア本島に特にマイセンなどの外国製品の輸入を妨げるという大胆な事も議会に請願している。なお重要な原料であるカオリンは、ヴィチェンツァ(Vicenza)のトレット(Tretto)産を使用した。
かくして四つの窯と、50人の職人を擁するコッツィ窯が1764年より、操業を始める事となった。
コッツィ窯はこの時代、かなりの高温の飲み物にも耐える、高品質の磁器を生産する事で、競争相手に対して優位に立っていた。操業して2−3年ですでに輸出部門を創設するなど、事業は順調に発展し、特にイギリスやトルコでの磁器のニーズを良く理解しており、オーストリア領ロンバルディアから、中近東まで、広範囲に販路を広げて、多くの磁器の輸出に成功していた。
そしてコッツィ窯の最大のパトロンは、ヴェネツィア共和国自身であった。
特にドージェ(Doge)選挙の折りには、特に贅沢なもてなしが行われ,大量の磁器の注文があった。
コッツィ窯の素地は灰色がかった硬質磁器で、不純物を一部含んでいた。
また同時にマヨリカ陶器の制作も行っていたのだが、その事こそ、如何にこの窯において熟慮深い経営が行われていたかを物語っている。トピックスの「・・・ヴェネツィア共和国での陶磁器生産」のところでも述べたが、消費者に取って重要なのは、カオリンを含むか否かでは無く、その焼き物が純白か、硬いか、耐久性があるかどうかという事であった。更に廉価であるかという事を重要に考える購買層を無視する事はできない。むしろこの層の需要を掴む事で、経営を安定化させる事ができる。多くの窯で磁器と並行してマヨリカ陶器の制作が行われた理由はそう言う所にあった。
作品は、テーブルウェアからフィギュアまで非常に多彩で、装飾もシノワズリや、ロココ、新古典主義と、約50年の長い操業期間を反映している。
窯印は、アイアンレッドで錨のマークが底に描かれ、大きな鎖が付属している所で英国チェルシー窯の窯印と区別出来る。但しフィギュアはノーマークの事が多い。
長い間操業を続けてきたこの窯は、フランス革命によって貴族が没落し、ナポレオンによって共和国が崩壊した結果、多くの顧客を失い、1798年にジェミニアーノが亡くなり、続いて1804年、パートナーで兄弟のヴィンチェンツォ・コッツィ(Vincenzo Cozzi)が亡くなり、結局、1812年にヴェネツィア共和国とともに運命を共にした。
フランチェスコ・スタッツィ(Francesco Stazzi)は、コッツィ窯に対して、幾つかの時代区分をしている。
❶ Fondazione / Della Fabbrica Cozzi e Concessione di Privilegi (1764-1765)
❷ La Fase Iniziale (1765-1768)
❸ Nuove Attività / Maiolica e Piastrelle(1769-1771)
❹ Verso La Fine / Del Primo Period / La Società Cozzi-Marinoni(1771-1778)
❺ / Del Secondo Periodo / La Società Cozzi-Marinoni(1778-1784)
Invenzione Della Terraglia(1780-1782)
Fine Del Secondo Periodo(1783-1784)
❻ / Terzo Periodo / Geminiano e Vincenzo Cozzi Titolari(1784-1791)
❼ /Quarto Periodo / Vincenzo Cozzi Unico Titolari(1791-1804)
❽ Fine della Fabbrica(1804-1812)
Riferimento
La Porcellana Di Venezia Nel ‘700 Vezzi, Hevelcke, Cozzi a cura di Filippo Pedrocco
Le porcellane veneziane di Germiniano e Vincenzo Cozzi da Francesco Stazzi
Italian Porcelain by Francesco Stazzi
Italian Porcelain by Arthur Lane
Eighteen Century Italian Porcelain by Clarele Corbeiller
Dictionary of European Porcelain by Ludwig Danckert