このペアーの四つ葉状のお皿は、恐らく同じ四つ葉状のカップ、若しくはティーボウルの受け皿と考えられる。
この様な形状の受け皿は、マイセン窯で1730年から1740年頃に制作されており、背面を黄色の単色にしている所も、マイセン窯の作品を模したものと考えられる。
バロック装飾の ラウプ・ウント・ベンダーヴェアク(Laub-und Bänderwerk )で周囲を金彩で装飾し、金彩のカルテューシュ(窓枠)の中に風景画が描かれている。
同じ様な作品が、ベルヴェデーレ(Belvedere)コレクションにあり、’Vincenne and early Sèvres porcelain’ by Joanna Gwiltという本に収載されている。
作品No43-45のこの一群は、ヴァンセンヌ窯の窯印が無く、前者二つはマイセン窯の様な青の双剣マークが釉上に入り、作品46はこの作品と同じノーマークである。
この様な作品群は、マイセン窯のティーセットを模倣して制作された初期のモノか、マイセン窯のティーセットの一部破損時の補充用、所謂リプレイスメントとして制作されたと考えられている。
またこの様な作品群で特徴的であるのは、金彩の技法である。セーヴル窯の様な金彩上に装飾が入らず、金彩のラインの脇から下の赤いラインが見え隠れしている事である。この作品では一部金彩が剥がれ、下の赤のラインをハッキリと見ることができる。これは金彩のラインの定着を良くする為とも考えられるが、金彩に赤のエナメルが一部混ざって、マイセン窯のレッドゴールドの風合いを出そうとしたのかも知れない。
また、裏面の黄色の単色装飾は、塗りにムラが有り、均一に塗られた、セーヴル時代との相違がハッキリと分かる。
果たしてこの作品と全く同じ金彩装飾、形状のものが参考文献で見つかったが、それはドッチア窯、第2期のものとされている。
‘Tazzine Italiane Da Collezione’ by Saul Levy という本の中に収載されている。
この本の Tav.LXV に、この作品と全く同じ辺縁の金彩装飾で、窓絵もパレットが、かなり酷似している。
ただこの本にはカップも載っており、カップの外側の黄色の単色装飾が見られるが、このノーマークのカップソーサーをロレンツォ・ジノリの作品とは考えにくく、私の作品の素地も、硬質磁器では全く無く、ドッチア窯とは考えられない。
結論は出ないが、先ずは金彩の特徴等から、この本に掲載されている作品も含めて、ヴァンセンヌ窯の作品の可能性の方が高い様に思われる。