James Giles Atelier (1743-1777)
 
 
 
Plate of the Worcester Porcelain (1765-1770)
 
Diameter/   22.0 cm
 
No Mark
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
このお皿は、ウースター窯で焼成され、ジャイルズ工房で装飾されたものである。
素地は典型的なウースターのステアタイトで、釉薬の途切れも認められる。
また典型的な鳥の描き方、チェリーの描き方でジャイルズ工房の装飾である事が分かる。
 
この様な極彩色の鳥は、恐らく想像上のものと思われる。18世紀の後半のイギリスでは、エキゾティック・バード(Exotic Bird)と呼ばれ、多くの装飾品に描かれた。
当時のロンドンの装飾芸術界は、セーヴル窯の影響を強く受けていた。
セーヴル窯では1756年の移転の年から、エティエンヌ・エヴァンス(Étienne Evans)らがこの変わった鳥達を描いたが、特にルイ・ドニ・アマン(Louis-Denis Armand)の鳥の絵が秀逸であった。
例えば1766年にエヴァンスらにより装飾されたディナーとデザートのサーヴィスが、イギリスのリッチモンド公爵(the Duke of Richmond)に納められている。
1767年にもロシアのラズモフスキー元帥(Maréchal de Razumovsky)に、有名なラムゾフスキーサーヴィス(ターコイズブルーのグラウンドカラーに豪華な金彩の施したエキゾティックバードの絵のサーヴィス)が制作された。
 
ヨーロッパでは、17世紀から18世紀の大航海時代を迎え、東洋から南洋、アフリカから新大陸に至るまで世界中に船を乗り出し、そこに同乗した科学者らは、世界中の動植物をスケッチしたり、採取して本国へ持ち帰った。それらを研究する博物学が興隆し、得られた知識は、出版技術の進歩とともに、美しい銅版画の印刷物へと作り替えられた。
これらのコミカルな鳥の絵の元となっているのは、イギリスのジョージ・エドワーズ(George Edwards)の1750年に発刊した ‘A Natural History of Uncommon Birds ‘という本である。
またセーヴル窯では、18世紀の最後の四半世紀に、より写実的な鳥の絵の装飾作品を制作しているが、これらの元となっているのは、フランス人のコムティ・ド・ブッフォン(Comte de Buffon )がパリで1770年から1783年まで出版した ‘Histoire naturelle des oiseaux ‘と言う本である。
イギリスでは 18世紀後半の磁器メーカーの草創期に、このジョージ・エドワーズの見慣れない変わった(uncommon)鳥の絵から次第に飛躍して、様々なエキゾティック・バードがセーヴル窯の影響の強いロンドンを中心に、各窯で描かれる様になった。ちなみにエドワーズはウォーリックの医大に所属していた。ウォーリックと、ウースター窯とは目と鼻の先である。
 
この作品は、ジャイルズ特有のエキゾティックバードで、輪郭線を殆ど描かず、太めの筆で一気に力強く、しかも愛らしく描かれている。
写実的では無いが、平面的な画法で極彩色の鳥の動きを上手く表現している。