James Giles Atelier (1743-1777)
Plate of the Worcester Porcelain (1763-1768)
Diameter/ 19.0 cm
Mark : Red Anchor ( similar to Chelsea one )
このお皿は、典型的なウースター製の輪花の素地に、ジャイルズ工房で中央に果物、周囲にもまた果物、更に昆虫を描いたジャイルズの代表的な作品である。
この様な昆虫の装飾は、元々はスイス人の女性昆虫学者マリア・ジビラ・メリアン(Maria Sibylla Merian)(1647−1717)のイラストに由来するが、特にマイセンでは
ブリュール伯爵のロココ時代(1733-1763)に ゴットフリート・クリンガー(Gottfried Klinger)がこの様な昆虫の絵を写実的に描いた。(当ギャラリーに1点掲載しています)
しかしこの作品は、この作品のマークが物語っている様に、マイセンの影響を受けて、チェルシーでレッドアンカー時代(1752−1756)に製作された、所謂ハンス・スローンパターン(Hans Sloan’ Pattern)をジャイルズ工房が写したものと考えられる。チェルシーのハンス・スローンパターンは、マイセンと同じく、極めて写実的に描かれているが、このジャイルズ工房の装飾では、非常に鮮やかな色彩で、実寸よりも明らかに大きく、ディーテイルを省略し、しかも全く動きの無い形で描かれている。このようなスタイルは、ウェット・ブラッシュスタイル(Wet Brush Style)と呼ばれ、ジャイルズ工房に特徴的な描き方である。
ウースター窯自身でも、昆虫と果物を組み合わせた装飾作品が、1780年代に製作されたが、ブルーボーダーウェアの一種で、ダルハウジー伯爵パターン(Earl Dauhousie pattern)と呼ばれている。
この作品のマークは、やや大きいものの、その色彩、形状はチェルシーのレッドアンカー期のものと極めて類似している。ただチェルシーのこのマーク場合、そのマークはもっと辺縁に入れられている事が通常である。
この作品と同じジャイルズ工房の装飾で、ゴールドアンカー期(1756−1769)のマーク、即ちブラウンアンカーや、ゴールドアンカーが入れられている作品も存在する。
この作品は、チェルシーがダービーに買収される前に製作されたものであるが、買収後にチェルシーからジャイルズ工房へ職人が流れたとも考えられており、買収前からこの二つのロンドンのメーカーは、密接な関係があったのかも知れない。