このフィギュアは、ヴェゲリーの代表的な「天使シリーズ」の作品の一つである。
このシリーズは、天使が様々な職業に扮して表現され、とても愛らしい作品に仕上がっている。
これは可愛い翼を持つ女性の天使で、球根型の二つ把手の付いた花瓶を頭の上にのせ、溝の彫った円いロカイユ風の台の上に立っている。
この台の溝は、ヴェゲリーのフィギュアに特徴的だが、このシリーズ自体、マイセンのフィギュアを模倣しており、おそらく台もマイセンを模したものと思われる。
(このシリーズには、マイセンの原型を写したものと、ヴェゲリーオリジナルのものが混在する。この作品のマイセンの原型は確認されておらず、ヴェゲリーオリジナルと思われる。)
また左手には、お花を沢山入れた籐製の籠を持ち、両足のつま先を外に捻って立てて立っているモチーフになっている。お尻の高さまでのジャケットの前を開けて胸と腹を出して、しわの入った足首までのスカートを履いている。
窯印はフィギュアの後ろに釉下に青で「W」が入れられているが、ドイツのヴァレンドルフ窯も似た窯印で、イギリスではウースター窯もこの「W」を使用している。ヴェゲリーの場合は、無釉の底に入っている場合と、この作品のように後ろに釉下の青で入れる場合がある。
また底の刻印は、「I/90/36」とあるが、一番上の数字は、窯の中での置く位置を表している。この刻印のルールは、食器や、花瓶など、そのグループによって違っているが、この天使のシリーズでは、モデルナンバー110、114、116以外は全て、「I/90/・」になっている。またモデルナンバー108、119、120、129は、刻印のスペースが無く、「I/43」などと、90が省略されている。
モデルナンバー106のこの作品で言うと、一番下の数字の36が、このフィギュアの数字で、発注する際には、モデルナンバーだけではなく、同時にこの数字で発注されていたようである。つまり同じモデルでも複数のヴァリエーションがあるものがあって、それを区別するのにこの番号が必要であった。逆に一番下の数字が同じでも、複数のモデルが該当しているケースもある。その一つが先ほど述べた中間の数字が109になっているモデルナンバー110、114、116となっている。
このベンルリンの最初期窯のヴェゲリーの作品は希少で、ストックホルムの Traugotto Family が50点を所有していたが、大戦後にストックホルムの国立美術館に収蔵されている。また幾つかの作品はベルリンの工芸美術館、また筆者はデュッセルドルフの国立陶磁器美術館で多くの天使シリーズのフィギュアを初めて見て、その秀逸さに非常に感銘を受けた。
Referenz
Berliner Porzellan der Manufaktur von Wilhelm Casper Wegely 1751-1757 von Gisela Zick
Kunstgewerwemuseum der Stadt Köln Figüliches Porzellan von Ursula Erichsen-Firle
Berliner Porzellan des 18. Jahrhunderts bearbeitet von Johanna Lessmann et al
Dictionary of European Porcelain by Ludwig Danckert